開高健の短編小説『裸の王様』は、1957年に雑誌「文學界」で発表され、1958年に文藝春秋新社から刊行された作品で、同年の第38回下半期芥川賞を受賞しました
あらすじ
主人公の“僕”(画塾講師)は、絵画教育への情熱から、小学校教師の友人・山口に頼まれて、生徒・大田太郎を画塾に迎え入れます
太郎は最初、電車やチューリップなど決まりきったモチーフばかりを描き、孤独と自閉の気配が漂っています
“僕”は自然の中へ太郎を連れ出し、創造力を伸ばそうと試み、ついには童話『裸の王様』をテーマにした挿絵コンテストを企画します
しかしこの企画は、商業的野心に燃える太郎の父・大田社長に乗っ取られてしまいます 。
最後に、太郎の描いた“裸の王様”の絵が審査会場に登場し、大人たちの偽善や型にはまった価値観に対し、“僕”が太郎の作品をあえて明かすことで、作品への気づきと解放を示唆し、爽快な反抗として物語は幕を閉じます 。
“偽善と虚栄に満ちた社会”への批判:大人の権威や社会システムに対する皮肉と告発が根底にあり、子どもの自由な感性が救済として描かれており、そのメッセージ性と文体は鮮烈で、開高健の鋭い視点と筆致を味わうのにうってつけで、現代まで読み継がれる価値のある作品です。
文芸春秋・昭和33年3月初版発行の開高健「裸の王様」です。経年のヤケが少しあり、カバー背上端に小スレがありますが、シミや書き込み、蔵書印などはありません。装幀は坂根進です。
67年前の古書であることをご理解の上、購入の検討をお願いいたします。